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8月に入ると、関西のホテルはどこも「部屋が足りない」状態になる。お盆の帰省需要に加えて、インバウンドのピークが重なるこの時期、稼働率が90%を超えるプロパティが大阪・神戸では珍しくなくなっている。
実際にClearsが関わった神戸市内の中規模ホテル(客室数80室)では、8月のお盆期間に稼働率が93%まで達した。客室売上は前月比で約18%増となった一方、清掃スタッフの緊急増員・深夜帯の追加人件費・ミスによるクレーム対応コストが積み上がり、8月の営業利益は7月を下回る結果になった。「こんなに入っているのに、なぜ儲かっていないのか」——担当者がそう口にしたのが、9月上旬のことだった。この逆転現象は、このホテルだけの話ではない。稼働が上がるほど利益が消えていくのは、清掃コストの「構造」が変わっていないからだ——では、何を変えれば解決するか。
稼働が上がっても利益が増えない。その原因のほとんどは、清掃コストが「入室数に連動しない固定費」のまま組まれていることにある。2026年上半期の訪日外客数は前年同期比約25%増となり、JNTO(日本政府観光局)の月次統計でも関西圏の宿泊需要が特に高い水準で推移している。需要があるときに利益を最大化できているか。稼働が上がるほど、オペレーション側のコスト構造が試される。特に清掃を中心とした客室回転のコストは、稼働率の変動に連動する形で設計しておかないと、高稼働期ほど利益率が圧迫されるという逆転現象が起きる。今日はその構造を、KPIと試算の両面から整理したい。

2026年上半期、インバウンド25%増はホテルの清掃コストとPLに何をしたか
今年の関西のホテル市場を一言で言うと、「需要の急回復がオペレーションの限界を先に露出させた」という状態に近い。大阪・ミナミや神戸・三宮エリアでは、週末を中心に稼働率が90%台前半で張り付く日が増えている。これは単純に売上が増えたということを意味するが、同時に「1室あたりの処理速度」を上げざるを得ない局面でもある。
PLで何が起きているかというと、客室売上(Room Revenue)は伸びているのに、清掃・リネン・アメニティを含む客室コスト(Room Cost)が比例以上に膨らんでいるケースが増えている。理由はシンプルで、稼働が急に上がったとき、多くのホテルは「人を増やす」という対応を取る。しかし、スポットで採用した人材の教育コスト、ミスによるクレーム対応、深夜帯の追加人件費——これらが積み上がると、RevPARは上がっているのにGOPマージンが下がる、という見た目に矛盾した数字が出てくる。
インバウンドが25%伸びるというのは、経営者にとっては「チャンス」でありながら、同時に「オペレーションの設計が試される局面」でもある。需要があるときに利益を最大化できているか。そこが問われている。

稼働率・RevPAR・外注コスト——3つのKPIがつながる構造を整理する
ホテルの経営指標をシンプルに並べると、稼働率(Occupancy Rate)・RevPAR(Revenue Per Available Room)・外注コスト比率の3つは、それぞれ独立した指標に見えて実際には連動している。
稼働率が上がると、RevPARは基本的に改善する。100室のホテルで平均客室単価が15,000円だとして、稼働率が70%から90%に上がれば、RevPARは10,500円から13,500円に跳ね上がる。日次の客室売上で言えば、1,050,000円から1,350,000円。月次では約9,000,000円の差になる。
一方、稼働率が上がるということは、清掃対象の客室数も増えるということだ。稼働率70%なら70室分のターンオーバー清掃が必要で、90%なら90室分必要になる。この差の20室分を自社スタッフで埋めようとするとき、固定の人件費体制では「繁忙期だけ足りない」という問題が生じる。
外注コスト比率という指標で見ると、清掃を変動費として外注化したとき、稼働率が高いほど「1室あたりの外注コストが売上に占める比率」は相対的に下がる。これが外注ROIの基本的な構造で、稼働が高い局面ほど外注の経済合理性が高まる理由だ。

稼働率70%と90%では清掃外注ROIがどう変わるか。試算で見る損益分岐
本試算は大阪・神戸エリア・客室数80室前後の中規模ホテルを対象としたClearsの実績データをもとに算出。実績データが使用できない項目については標準的な中規模ホテルを想定した試算値として明示する。
以下は大阪・神戸エリアの中規模ホテルを想定した試算だ(実際の客室単価帯と清掃作業時間の傾向を参考に設定しているが、実績データではなく、モデルケースとしての概算値である。実際のコストは物件規模・エリア・客層によって異なる)。
前提条件:客室数100室、平均客室単価15,000円、清掃外注単価1室あたり2,500円(チェックアウト清掃・リネン交換含む)
稼働率70%の場合、1日あたりの客室売上は約1,050,000円。清掃対象は70室で、外注費用は175,000円。外注コスト対売上比率は約16.7%になる。
稼働率90%の場合、1日あたりの客室売上は約1,350,000円。清掃対象は90室で、外注費用は225,000円。外注コスト対売上比率は約16.7%——と、比率は変わらない。ただし、ここで自社スタッフを「稼働90%を想定した固定体制」で運用しようとすると、稼働が70%の閑散期にも90%分の人件費が発生する。
月次で考えると差はさらに開く。繁忙期(稼働90%)の月と閑散期(稼働55%)の月が混在する年間運用において、固定スタッフ体制で繁忙期をカバーしようとすれば、閑散期の人件費ロスが積み上がる。清掃外注を変動費として設計すれば、稼働に連動してコストが動く。損益分岐点は「年間平均稼働率が一定水準を超えた時点」から外注ROIが固定運用を上回る構造で、この試算モデルでは月間稼働率が65〜70%を超えると外注モデルの優位性が出始める。外注費用の具体的な水準については、清掃外注の費用感を見るからご確認いただける。
お盆ピーク後に経営者が直面する「高稼働の反動コスト」という現実
お盆が終わると、関西のホテル市場には毎年同じことが起きる。8月中旬まで満室に近い状態が続いていたのに、下旬に入ると稼働率が一気に10〜15ポイント落ちる。これは需要の問題ではなく、構造的な季節変動で、どのプロパティも同じように経験している。
問題はこの「反動期」に、ピーク対応のために厚くしたスタッフ体制がそのまま残ることだ。お盆に合わせて増員した清掃スタッフのシフトを急には削れない。研修を済ませたばかりのメンバーを手放すのも惜しい。結果として、稼働が落ちても人件費は落ちない期間が数週間発生する。
これが「高稼働の反動コスト」と呼べる現象で、ピーク期のRevPAR改善分を、ピーク後の固定費が少しずつ食いにくる。実際に8〜9月のPLを詳しく見ると、8月の客室売上が過去最高水準でも、9月のGOPが前年を下回るケースがある。清掃コストを中心とした人件費の調整が遅れることが、主因のひとつになっている。
この反動を抑えるには、ピーク期に「稼働に連動して動く体制」を作っておくことが先決で、それが清掃外注化の最も現実的な意義でもある。
清掃外注を固定費から変動費に変えると、稼働の波に経営が耐えられる理由
清掃を自社運営している場合、コスト構造の大半は固定費だ。スタッフの月給・社会保険・制服・備品——稼働が下がってもこれらは減らない。繁忙期に「足りない」、閑散期に「余る」という非効率が、年間を通じてPLを削り続ける。
外注化の本質は「清掃コストを稼働に連動させる」ことにある。稼働90%の日は90室分の費用が発生し、稼働55%の日は55室分だけ発生する。この「使った分だけ払う」構造に切り替えると、閑散期のコストロスが消える。代わりに繁忙期の外注単価が若干高くなる可能性はあるが、年間トータルで見たときのGOPへの貢献は、多くのケースで固定運用を上回る。
もうひとつ見落とされがちな話として、自社スタッフで清掃を運営していると、経営者の判断リソースが「シフト管理・採用・教育」に取られ続ける。これは直接数字に出ないが、経営判断のスピードや質に影響する。清掃体制を外注で安定させると、経営者が本来注力すべき「収益改善・サービス設計・販売戦略」に時間を使えるようになる。これをROIとして数値化するのは難しいが、「稼働が上がった局面でさらに手を打てたか」という差は、中期的なRevPARの推移に出てくる。
Clearsが大阪・神戸エリアで取り組んでいるのも、まさにこの「稼働変動に耐えられるオペレーション設計」だ。清掃を請け負うだけでなく、稼働パターンと客室回転の実態に合わせてシフト・品質基準・チェック体制を設計することで、ホテル側が稼働の波に振り回されない体制を作ることを目指している。
ROIが合うタイミングを逃さないために——高稼働期の清掃外注設計の考え方
清掃外注のROIが最も出やすいのは、「今まさに稼働が高い局面」だ。インバウンドが25%増で伸びている今年の夏は、関西のホテルにとってその局面が続いている。このタイミングに外注設計を整えておくと、単に今のピークを乗り越えるだけでなく、秋以降の需要変動にも対応できる体制が残る。
外注設計を検討するときに最初に確認したいのは、3つの数字だ。①現在の月間平均稼働率、②清掃を含む客室コストの売上比率、③繁忙期と閑散期の稼働差(最大何ポイント開くか)。この3つが把握できていると、外注導入後のROI試算が具体的に立てられる。
稼働率が現状でも70%を超えているなら、清掃外注ROIはほぼ間違いなく合う水準にある。稼働率が60%台でも、繁忙期の振れ幅が大きい場合は、変動費化の効果が出やすい構造になっている。逆に稼働が安定して55%以下に止まっているなら、まず稼働率の改善が先で、外注設計はその次の話になる。
お盆のピークが過ぎたあと、9月・10月の稼働が落ちてから「どうしようか」と考えはじめると、動けるタイミングがずれる。高稼働期の今、オペレーションを見直す判断が、秋以降のGOPを守ることにつながる。
まとめ
2026年夏、インバウンド25%増という需要の伸びは、関西のホテル市場に追い風をもたらしている。ただ、その恩恵をPLにきちんと残せているかというと、オペレーション設計次第でかなり差が出る。稼働が上がるほど清掃外注のROIが合う——これは理屈ではなく、稼働と外注コストの構造から導かれる事実だ。
「忙しい時期を乗り切る」だけでなく、「忙しい時期に利益を最大化できる体制を作る」という発想の切り替えが、今まさに必要な局面だと思っている。高稼働期にオペレーション設計を整えておいた施設は、次の閑散期にも体力が残っている。その差は、来年の春以降にじわじわと出てくる。
Clearsでは、大阪・神戸エリアのホテル・旅館を対象に、清掃外注の導入相談からオペレーション設計の見直しまで対応しています。稼働率・外注コストの試算をもとに、現状の体制に合った提案をお伝えしますので、まずは以下よりお気軽にご相談ください。
稼働率と外注コストのバランスが自社でどう出るか、個別にシミュレーションします。
清掃外注の導入検討をしているホテル担当者の方はこちらからどうぞ。
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プレスウォーカー記事:https://presswalker.jp/press/48262
観光データラボ:http://hotelnews.clrs.co.jp
