インバウンド

東アジア市場、次なる兆しを読む。2024年の「旅行消費・宿泊傾向」から見る進化のかたち【シリーズ第2弾】

2025.05.30

日本のインバウンド。東アジア市場。

“復活”のその先へ、何が見えてきたのか？

2024年、日本のインバウンド市場は東アジア市場の復調を追い風に、新たな成長局面に入りました。

前回の記事では、その背景にある「体験の深化」「意味づけ消費」への移行を深掘りしました。
👉 前回記事はこちら

今回は、その流れの延長線上で「旅行消費・単価・宿泊傾向の変化」に着目。
各国の観光客が“お金をどこにどう使っているのか”、そしてその変化が何を意味するのかを読み解いていきます。

東アジア4市場の基本データ（2024年）

出典：JNTO「訪日外客統計（2024年）」

単価はどう変わった？宿泊スタイルと連動する“滞在の質”の変化

● 中国：高単価だけでなく“分散消費”が台頭

・かつては都市部での爆買いが象徴的だったが、現在は「地方＋ラグジュアリー宿泊＋体験型消費」へシフト。
　例：京都の町家貸切宿泊、和倉温泉の再訪促進キャンペーンなどで高価格帯が動いている。

● 韓国：短期＆複数回訪問で「積み重ね型」の支出

・宿泊は2～3泊の短期が多いが、回数が増えたことで支出総額は安定。
・都市＋地方を掛け合わせる2地域訪問が主流に。
　例：大阪＋城崎温泉や、東京＋那須・日光など

● 台湾：中長期滞在とリピーターによる“深堀り消費”

・一つの地域に長く滞在し、じっくり楽しむスタイルが顕著。
・リピーターは宿のこだわりが強く、旅館の指名予約も多い。
　例：高山の古民家宿、長野のワーケーション宿などが人気

● 香港：都市滞在から“文化体験重視”に
・百貨店中心の買い物旅行から、美術館や建築巡り、歴史街道の散策などへと関心が移行。
・消費単価は中程度ながら、旅の質的価値を重視する傾向が強い。

宿泊スタイルの変化に見る“旅の本質”の変化

■ 変化①：価格ではなく「意味」にお金を使う
・「とにかく安く泊まりたい」から「価値のある滞在」にシフト。
・例：料理重視の宿、文化体験付き宿泊、宿泊者限定イベント付き旅館など

■ 変化②：都市 vs 地方ではなく「都市＋地方」の旅
・旅程の組み方が変わり、「都市と自然」「現代と伝統」などの対比を楽しむ構成が主流に。
・例：羽田IN→東京→富山→白川郷→関空OUT などの周遊ルート

現場への示唆　価格競争からの脱却を

東アジア市場では、「安さ」ではなく「選ばれる理由」を求める消費者が増えています。

これに対し、観光業者はどう動くべきか？

✅ 選ばれる宿泊体験の作り方
・宿の背景にストーリーがあるか
・地域と連携した体験ができるか
・持続可能な運営を実感できるか

これらが、「予約される宿」と「選ばれない宿」の分かれ道となっていくでしょう。

「旅行単価」を見るだけでは見えてこない未来

旅行単価や宿泊数といった表面的なデータだけでなく、

どのように旅行が変わってきているかを読み取ることが、次の戦略につながります。

東アジア市場はすでに「価格」ではなく「価値」の時代へ。

次回は、欧米豪市場に目を向け、
なぜ彼らの訪日旅行が急伸したのか、その背景を深掘りしていきます。

【参考出典】
日本政府観光局（JNTO）「訪日外客統計（2024年速報）」
観光庁「訪日外国人消費動向調査（2024年1-3月期）」
各地方自治体の観光データ・宿泊レポート（例：京都市観光協会、飛騨市観光協会など）

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