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clears(クリアズ)調査

2025年の訪日客数はなぜ約4270万人まで伸びたのか⁉

はじめに

2025年の訪日外国人客数(推計)は、ついに約4200万人(前年比約15.8%増)となりました。
政府が1月20日に発表したこの数字は、初めて「4000万人台」に乗り、コロナ前の2019年(約3188万人)を大きく上回りました。
コロナ前の最高値を大きく更新し、「反動需要」という言葉だけでは説明できないレベルに来ています。

数字だけ見れば「円安だから」「コロナ明けの反動需要だから」と片付けられそうですが、実際はもっと複雑です。今回の4200万人突破は、そういった“反動需要”の領域では説明しきれないところに面白さがあります。

そこで今回の記事は、
この“4270万人”がどのような理由で生まれたのかを、説明します。

内容が少し広くなるため、記事は3回に分けて展開します。

① なぜ4200万人まで増えたのか(今回)
② 2026年はどうなるか(特に中国市場も含めて)
③ 政府の「2030年6000万人」目標は現実的なのか

今回はその1回目です。
「4200万人はなぜ起きたのか」に焦点を置きます。

目次

  • 1. 4270万人は「表層+構造+ブランド」の積み重ね
  • 2. 【第1層:表層要因】円安・反動需要・便数回復
  • 3. 【第2層:構造要因】欧米豪の参入と“滞在型市場”
  • 4. 【第3層:ブランド要因】“選ばれる理由”が変わった
  • 5. 4270万人という数字の意味
  • 6. 2025年は“旅行の多様性”が顕在化した年

  • 1. 4270万人は「表層+構造+ブランド」の積み重ね

    観光大国を目指す日本は、コロナ前から伸び始めていましたが、今回の4270万人は明らかに色が違います。

    よくある説明は3つです。
    円安
    • 観光の反動需要
    • 航空便の回復

    しかし、これでは全体像の半分しか説明できません。
    観光庁やJNTOの市場別データを見ると、今回の4200万人には、表層とは別に構造とブランドの要因が積み重なっています。

    大づかみに分けると、要因はこの3層です。

    1. 表層要因
      円安・コロナ後の反動・航空便の回復といった「勢いを作った要因」
    2. 構造要因
      欧米豪や富裕層・長期滞在層が本格的に参入し、市場の“厚み”が増した変化
    3. ブランド要因
      「なぜ日本なのか」の理由そのものが変わってきたこと

    2. 【第1層:表層要因】円安・反動需要・便数回復

    まずはもっとも表に見える部分。

    2024〜25年は
    円安(相対的な「安さ」)
    • コロナ後の旅行再開
    • LCC含む航空便の回復

    が同時に起きました。

    ここまでは、ある程度ほかの国にも共通する話です。
    それでも日本だけが「4000万人台後半」まで伸びた背景には、もう一段深い“構造”の変化があります。


    3. 【第2層:構造要因】欧米豪の参入と“滞在型市場”

    欧米豪

    国・地域 2019年 2025推計値 19年比
    アメリカ 1,720,000人 2,600,000人前後 +約50%
    カナダ 370,000人 500,000人前後 +約35%
    イギリス 420,000人 600,000人前後 +約40%
    フランス 315,000人 430,000人前後 +約35%
    ドイツ 226,000人 300,000人前後 +約30%
    オーストラリア 621,000人 800,000人前後 +約30%

    近距離アジア

    国・地域 2019年 2025推計 19年比
    韓国 5,584,000人 6,100,000人前後 +約10%
    台湾 4,890,000人 5,200,000人前後 +約5%
    香港 2,290,000人 2,400,000人前後 +約5%
    ASEAN合計 3,300,000人 3,500,000〜3,800,000人 +約10〜15%

    中国(主要国の中で唯一の減少市場)

    2019年 2025推計 19年比
    中国 9,590,000人 5,300,000〜5,800,000人 -約40%

    今回の4200万人で最も重要なのは、
    欧米豪が明確に日本を選び始めたことです。

    2019年比で見ると、訪日客数は

    ・北米(米国+カナダ)+50%
    ・欧州(英+仏+独 他)+30〜+35%
    ・豪州 +30%
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    ・韓国 +10%
    ・中国 -40%
    ・台湾 +5%
    ・香港 +5%
    ・ASEAN 合計 +15%

    というように、欧米豪の伸び率はアジア各国よりも高いです。

    以前の訪日は、“アジアの短期市場”が中心で、
    「近くて行きやすいアジアの国」として選ばれていましたが、

    今は“欧米豪+富裕+長期滞在”が加わったことで市場が厚くなっています。

    欧米豪(北米・欧州・オーストラリア)
    • 富裕層 / 中間層の長期滞在
    • 地方や二度目・三度目の日本

    が本格的に加わっています。

    結果として、
    平均宿泊数
    • 1人あたり旅行単価
    • 訪問エリアの広がり
    • 旅行目的の多様化

    がセットで伸びています。

    「観光」から「滞在」へ、旅の形が変わりつつある

    欧米豪や富裕層ほど、
    • 1回の滞在日数が長い
    • 「○○を見に行く」より「○○で過ごす」に比重がある
    • 都市+地方、自然+文化の“組み合わせ”を求める

    傾向が強くなります。

    この層が厚くなったことで、日本全体のインバウンドが

    “スポットを巡る観光”から、“滞在を楽しむ旅行”に少しずつ寄っている。

    と言える状況になりつつあります。

    この「滞在型市場」の膨らみが、
    単純な人数以上に、受け入れ側の体感としての「増えた感」を生んでいる部分です。


    4. 【第3層:ブランド要因】“選ばれる理由”が変わった

    もうひとつ、数年前と明確に違うのは
    選ばれる理由の質です。

    かつて訪日は

    “珍しいアジアの国”
    “安い国”
    “近い国”

    といった、どちらかというと“条件面”の理由が前面に出ることが多かったですが、最近は

    ・治安の良さ・安心感
    ・食のクオリティ(どこで食べても一定以上おいしい)
    ・都市と自然の距離が近い
    ・交通インフラが比較的わかりやすい
    ・文化的な“余白”があり、何度来ても楽しめる

    といった、“体験の質”ベースの理由が増えています。

    特に、
    欧米豪のリピーター層
    • 富裕層の長期滞在
    • アジアの若いFIT(個人旅行)層

    のあいだで、

    「自分なりのテーマを持って楽しめる国」

    として日本が語られることが増えたのは、ここ数年の大きな変化です。

    この「ブランドの質の変化」が、
    単純な“ブーム”ではなく 「選ばれ続ける土台」 になり始めています。


    5. 4270万人という数字の意味

    4270万人は大きな数字ですが、
    市場の内訳を見ると“まだ余白がある数字”です。

    では、この4270万人はどんな位置づけの数字なのか。

    現時点で見えるポイントは、おおまかに3つです。

    中国がまだ戻り切っていない
    2025年の全体数字が過去最高である一方、中国からの訪日客数は、2019年比で依然として低い水準にとどまっています。

    欧米豪は伸び途中
    欧米豪の訪日は伸びているものの、各国の人口規模や所得水準から見れば、まだ「伸びしろがある」段階です。

    ASEAN市場は中長期的に拡大トレンド
    タイ・ベトナム・インドネシアなど、人口・所得ともに伸びている国の訪日需要は、構造的に増えやすい環境にあります。

    つまり4200万人はピークではなく通過点である可能性が高い。


    6. 2025年は“旅行の多様性”が顕在化した年

    最後に、4270万人という“量”よりも、
    観光現場として重要だと感じる変化を一つ挙げるとすれば、

    「旅行の中身が、かなり多様になった」

    という点です。
    • 富裕層向けの高付加価値旅行と、LCCを使った節約型旅行が、同時に伸びている
    • 団体旅行と個人旅行(特に若いFIT)が共存し、使うエリアや時間帯が分かれ始めている
    • 長期滞在者が「観光地」ではなく「暮らすように滞在できる場所」を選び始めている

    こうした変化は、2026年以降の
    • どこに投資するか
    • どんな商品を作るか
    • どの層を狙うのか

    という現場の意思決定に、じわじわ効いてきます。


    次回:2026年はどうなるのか

    今回扱ったのは“なぜ4270万人になったのか”の部分です。

    次回は

    “では2026年はどうなるのか”
    “中国が戻らないと何が起きるのか”
    “市場はどこで踊り場を迎えるのか”

    という特に観光事業者にとって気になる話になります。

    特に今のインバウンド市場は
    数字は過去最高なのに
    中身は調整に入っているという
    少し複雑な状態に入っています。


    参考資料
    ・観光庁「訪日外国人消費動向調査」
    ・JNTO「訪日市場データ」


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