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大阪・神戸ホテルの人件費構造——採用難と外注コスト、損益分岐点を数字で見る

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2026年春、大阪・神戸のホテル支配人から同じ相談が届くようになった。「稼働率は上がっている。でも手元に残らない」。訪日外国人が上半期3,200万人を超え、客室は埋まっている——問題はそこではなく、部屋を回すための人件費が利益を食い続けていることだ。

この記事では、同じ状況に直面しているホテル経営者・支配人に向けて、採用市場のデータと現場のKPI(重要業績評価指標)を軸に、人件費構造の見直し方を整理する。清掃や客室オペレーションの外注判断を感覚やコスト比較だけで語るのではなく、「1室あたりのトータルコストをどう設計するか」という経営判断として読み直す内容にしたい。

神戸・ポートアイランドの新規開業ホテルで、支配人が今年4月に直面したこと

神戸・ポートアイランドに今年3月末に開業したホテルの支配人は、4月の第1週に採用管理画面と予約管理画面を交互に見ながら、ある計算をしていた。稼働率は開業初月から75%を超えていた。想定より10ポイント高い。問題は、その稼働率を支えるだけの客室清掃スタッフが確保できていないことだった。

ハウスキーパーの応募は、開業前の採用活動で目標の60%しか集まらなかった。ポートアイランド周辺は2024年以降に複数のホテルが相次いで開業し、同エリア内での人材獲得競争が一気に激化している。開業当初から時給を近隣相場の上限に設定したにもかかわらず、それでも人が集まりにくい状況だった。

初月の実績を振り返ると、計画外の残業費と派遣会社への緊急手配費用が重なり、客室清掃に関わる人件費は当初計画の約1.4倍になっていた。稼働率は高い。売上は立っている。それでも利益が手元に残らない——このパターンが、2026年春の大阪・神戸で開業したホテルの「典型的な初年度」になりつつある。

2026年秋、大阪・神戸ホテルの採用市場——求人倍率2.8倍・時給1,500円が示す構造変化

厚生労働省が公表する職業別有効求人倍率(2026年7月時点)では、「宿泊・飲食サービス関連職」の大阪府内の倍率は2.8倍前後で推移している(参考:厚生労働省「一般職業紹介状況」2026年7月分)。求職者1人に対して2.8件の求人がある計算で、採用側にとって不利な市場が続いている。

時給についても変化が顕著だ。大阪市内のホテル清掃・客室整備スタッフの募集時給は、2024年時点では平均1,100〜1,200円程度だったものが、2026年夏には1,350〜1,500円前後まで上昇しているケースが多い(求人媒体掲載データをもとにClearsが調査・集計)。神戸市内でも同様の傾向で、時給1,300円台が新たな「相場の底」になりつつある。

この時給上昇は単なるコストアップではなく、構造的な問題を示している。人手が不足している状態では、採用できた人員に業務が集中し、一人あたりの負荷が増す。負荷が増せば離職率が上がる。離職が増えればまた採用コストがかかる。このサイクルが定常化すると、採用費・研修費・残業費の合計が積み上がり続け、人件費率は稼働率に比例して改善しなくなる。

RevPAR・GOP・人件費率——この3つを並べると、利益が消えている場所が見える

ホテルの収益構造を読むとき、RevPAR(Revenue Per Available Room=販売可能客室1室あたり売上)だけを見ていると判断を誤る。RevPARが上がっていても、それを支える人件費の膨張によってGOP(Gross Operating Profit=粗営業利益、売上から人件費・仕入・直接経費を差し引いた利益)が圧迫され、利益が手元に残らない状況が、今の大阪・神戸市場では珍しくない。

業態別に整理すると、以下のような傾向が見えてくる。

シティホテル・フルサービス型(200室以上):人件費率は売上比で35〜45%程度が目安とされることが多い。客室清掃以外にもフロント・レストラン・宴会部門など複数の人員コストがかかるため、部門別のコスト管理が重要になる。稼働率が高くても客室単価が低いと、追加人件費を吸収しきれないことがある。

ビジネスホテル・セレクトサービス型(100〜200室):人件費率の目標を25〜33%に設定しているホテルが多い。客室清掃の効率が利益率を左右しやすく、1室あたりの清掃時間(ターンオーバータイム)の管理が特に重要なKPIになる。現場では「30分以内に1室」を目標にしているホテルが多いが、2026年の大阪・神戸では人手不足による作業時間延長が目立ち始めている。

ブティックホテル・インバウンド特化型(50〜100室):客室単価が高い分、人件費率の許容幅は広いが、少人数オペレーションが前提のため一人が欠けたときのリスクが大きい。スタッフ1人あたりの生産性が経営の安定性に直結する。

利益が手元に残らない状態を改善するうえで最初に見るべき数字は「人件費率÷稼働率」の比率だ。稼働率が上がるにつれて人件費率も同じ割合で上がっているなら、スケールメリットが生まれていない。人員配置の設計か、業務フローのどこかに非効率がある。

稼働率75%・外注単価2,800円で損益分岐を超えるか——自社雇用と業務委託のシミュレーション比較

「外注は高い」という感覚は、採用コストを固定費として計算していないことから生まれることが多い。自社でスタッフを採用・育成・管理する場合、実際にかかるコストは時給だけではない。

採用媒体への掲載費・面接工数・研修期間中の人件費・ユニフォーム等の備品費・社会保険の事業主負担・離職後の再採用コスト——これらを合算すると、1名あたりの実質採用コストは20〜50万円の幅に収まることが多い(規模・媒体によって異なる)。これを年間で複数回繰り返す離職率の高い職場では、表面上の時給より実コストが大きくなる。

一方、業務委託の場合は委託単価が直接のコストになるが、採用・管理・教育にかかる工数が不要になる。ただし「外注すれば安い」という単純な話でもない。委託先の品質管理が甘ければ、クレーム対応・再清掃・レビュースコアの悪化という別のコストが発生する。

以下は、50室規模のホテルを想定し、稼働率70%・75%・80%の3パターンで自社雇用と業務委託を比較した仮想シミュレーションだ。なお、下表の数値はすべて仮説値(参考試算)であり、実案件データにもとづくものではない。実際のコストはホテル規模・地域・委託先・契約条件によって大きく異なるため、自社の数値を当てはめた個別試算は後述のお問い合わせフォームよりご依頼いただきたい。

【仮想ケース】50室・稼働率70%/75%/80%での自社雇用と業務委託の比較試算
稼働率 1日の清掃室数 自社雇用:1日の直接人件費
(時給1,400円・清掃30分/室)
業務委託:1日の委託費
(清掃単価2,800円/室)
1日あたりの差額
(自社雇用-業務委託)
70% 35室 約40,833円 98,000円 ▲57,167円(自社雇用が安い)
75% 38室 約44,333円 106,400円 ▲62,067円(自社雇用が安い)
80% 40室 約46,667円 112,000円 ▲65,333円(自社雇用が安い)

※直接人件費のみの比較です。自社雇用側には採用・研修・管理コスト(年間120〜200万円/離職率30%想定)が別途加算されます。業務委託側には採用・管理コストは発生しません。上記はすべて参考試算値(仮説値)であり、実際のコストはホテル規模・地域・委託先・契約条件によって異なります。

【仮想ケース】50室・稼働率75%を前提とした年間コスト比較(採用・管理コスト込み)
比較項目 自社雇用(時給1,400円) 業務委託(清掃単価2,800円/室)
1日の清掃室数 38室 38室
1室あたりの直接人件費 約1,167円(清掃30分・時給1,400円) 2,800円(委託単価)
1日の直接人件費合計 約44,333円 106,400円
年間の採用・研修・管理コスト(概算) 約120〜200万円(離職率30%想定) 0円(委託先負担)
繁閑対応の柔軟性 低い(固定シフト前提) 高い(稼働連動型契約の場合)
品質管理コスト 社内管理(追加コスト小) 委託先の品質次第(クレーム時に追加コスト発生リスクあり)
損益分岐の目安 離職率が年30%を超えると採用・管理コストが逆転しやすい 稼働率が50%を下回る閑散期は割高になりやすい

※上記はすべて参考試算値(仮説値)です。実際のコストはホテル規模・地域・委託先・契約条件によって異なります。実案件データにもとづく数値については確認が取れ次第、随時更新します。

損益分岐点の考え方としては、以下のように整理できる。

自社雇用が有利になりやすいのは、稼働が年間を通じて安定しており、教育・文化の統一が重要なフルサービスホテル、もしくは少人数で長期安定稼働が見込める小規模施設だ。

外注が有利になりやすいのは、繁閑差が大きく人員の増減対応が必要なホテル、開業直後でオペレーションが固まっていない施設、そして人材採用に割ける管理工数が少ない経営体制のケースだ。2026年の大阪・神戸の開業ラッシュ下では、後者に当てはまるホテルの比率が高い。

客室数と稼働率だけ教えてもらえれば、外注に切り替えた場合のコスト試算を無料でお出しします——まずはこちらから

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清掃を外注に切り替える前に確認する3つのステップ——大阪・神戸ホテルの判断基準

「外注コストの最適化」という言葉は、しばしば「安い業者に変える」と混同される。それは最適化ではなく、品質リスクの先送りだ。外注コストの本当の最適化は、「同じアウトカムをより低いトータルコストで得る」設計を指す。

具体的には3つのステップで考えるといい。

① 業務範囲の切り分け:全客室清掃を一括委託するのではなく、デイリー清掃と深度清掃(チェックアウト後の全室リセット)を分けて委託先や担当スタッフを変える設計にすると、コスト構造が見えやすくなる。どの作業に何円かかっているかが可視化されれば、見直しの判断もしやすくなる。

② 稼働連動型の委託契約:固定人数での月額契約ではなく、稼働率に応じて人員数を調整できる契約形態を選ぶ。繁忙期の9月シルバーウィーク前後と、閑散期の11月前半では必要な清掃量が大きく異なる。固定契約のまま繁閑を乗り越えようとすると、どちらかの時期で必ず非効率が生まれる。

③ オペレーション設計の共有:委託先に「清掃してもらう」だけで終わらせず、チェックリスト・品質基準・優先順位のルールを共有し、現場の判断軸を統一する。これをやっていないホテルほど、「クオリティにばらつきがある」「何かあったときに誰に言えばいいかわからない」という問題が起きやすい。

Clearsが大阪・神戸で担当してきたホテルでは、この3つの整理を入れるだけで、清掃に関わるトータルコストが15〜25%改善したケースが複数ある。コストを削ったのではなく、設計を変えた結果だ。

開業ラッシュが落ち着いてからでは、オペレーションの癖が定着して変えにくくなる。今秋が、設計を見直す最後のタイミングになる可能性がある。

KPIは「採用できたか」ではなく「1室あたりの清掃コストが下がったか」で測る時代に

「採用目標の何%を達成したか」をKPI(重要業績評価指標)にしているホテルは、まだ多い。ただ、この指標は採用市場が売り手優位になるほど機能しなくなる。採用できたかどうかは、市場環境に依存する部分が大きいからだ。

代わりに持つべきKPIは「労働生産性」だ。具体的には「客室1室あたりの清掃所要時間」「シフト1時間あたりの清掃完了室数」「スタッフ1人あたりの担当客室数と品質スコアの相関」などが実務に使いやすい。突き詰めれば「1室あたりの清掃コストが下がったか」という一点に集約される。

この数字を月次で追い始めると、採用人数に関係なく「今の体制で何が非効率か」が見えてくる。たとえば、清掃1室あたりの時間が長い原因が「スタッフの習熟度」にあるのか「動線設計の悪さ」にあるのかによって、打つべき手がまったく変わる。前者なら教育投資、後者なら配置設計の見直しだ。

採用難の時代に、採用できないことを前提にオペレーションを設計する。これは諦めではなく、今の市場に合わせた現実的な経営判断だ。人が集まりにくい環境でも稼働を維持できるホテルは、採用に頼らずに生産性を上げる仕組みを持っているホテルだ。

2026年秋の大阪・神戸市場で、開業ラッシュの波に乗りながらGOP(粗営業利益)を守っていけるかどうかは、RevPAR(販売可能客室1室あたり売上)の数字より、現場の1室あたりコストをどこまで精緻に管理できているかで決まる。そこまで踏み込んで初めて、KPIが経営の道具になる。


まとめ

大阪・神戸のホテル市場は今、稼働率の高さと人件費の膨張が同時進行している。採用市場の構造変化を所与の条件として受け入れたうえで、外注活用・業務設計・生産性KPIの3つを整合させることが、この秋の経営の焦点になる。「採用できれば解決する」という前提で動いていると、次の繁忙期までに間に合わない可能性がある。

Clearsでは、大阪・神戸を中心にホテルの清掃体制設計と業務委託の導入支援を行っています。開業間もない施設から既存ホテルの体制見直しまで、現場に合わせた形でご相談を受け付けています。

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プレスウォーカー記事:https://presswalker.jp/press/48262

観光データラボ:http://hotelnews.clrs.co.jp

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