インバウンド

万博で注目される“高級ホテルの開業ラッシュ”なぜ今、大阪が注目されているのか？

2025.06.10

2025年の大阪・関西万博がいよいよ開幕し、夢洲を中心とした都市圏は国内外からの観光客で活気づいています。それに呼応するように、大阪では「高級ホテルの開業ラッシュ」が続いています。ウォルドーフ・アストリア大阪やキャノピーbyヒルトン、フォーシーズンズホテル大阪といった名だたるラグジュアリーブランドが、相次いで関西の地に旗艦拠点を構える――これは一過性の現象ではありません。

ではなぜ、今、大阪に高級ホテルが集中しているのでしょうか？

本記事では、万博というトピックを起点に、都市政策・観光トレンド・経済圏形成の視点からその背景と影響を読み解きます。

💬登場人物
• ユカ（高校1年生）：旅行好きで好奇心旺盛な高校生。
• タカハシ先生（教授）：観光経済学と都市政策を専門とする大学教授。

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ユカ

最近、大阪で高級ホテルの開業が相次いでるけど、これって万博のためだけ？終わったらどうするの？

タカハシ先生

良い質問ですね。確かに万博は大きな契機ですが、それだけではありません。大阪府と大阪市は、万博後の夢洲地区の活用について「夢洲第2期区域マスタープラン」を策定し、高級ホテルや大型アリーナ、モータースポーツ関連施設などを含む複合開発を進める方針です。

ユカ

でも、大阪ってこれまで高級ホテルが少なかったよね？なんで今になって急に増えてるの？

タカハシ先生

大阪はこれまで東京や京都に比べて高級ホテルの進出が遅れていましたが、万博やIR（統合型リゾート）の開業を控え、世界中からの富裕層やビジネス客の増加が見込まれています。これにより、外資系ホテルチェーンが大阪を新たな拠点として注目し、進出を加速させているのです。

ユカ

なるほど。でも、そんなにホテルが増えて大丈夫なの？需要が追いつかないんじゃない？

タカハシ先生

高級ホテルは一般的な宿泊施設とは異なり、価格競争に巻き込まれにくく、長期的に見て収益性が高いとされています。また、富裕層は「泊まる価値」があれば、需要は安定しています。さらに、大阪府はIR開業に合わせて、夢洲内に警察署や交番などの整備も計画しており、地域全体の安全性や利便性の向上も図られています。

ユカ

そうなんだ。でも、ホテルが増えると観光客ばかり得して、地元の人にはメリットがないんじゃない？

タカハシ先生

観光産業の発展は、地域経済の活性化や雇用の創出、インフラ整備など、地元にも多くのメリットをもたらします。例えば、堺市では高級ホテルのコンシェルジュと連携し、インバウンド富裕層向けの観光PRを実施するなど、地域全体で観光客を迎える体制を整えています。

ユカ

なるほど。じゃあ、これからの大阪はどんな都市を目指してるの？

タカハシ先生

大阪は「日常の中に非日常がある都市」を目指しています。世界の食、文化、多様性が共存しながらも、人間らしさや地元の温かさを忘れない。シンガポールのような機能美と、パリのような暮らしの美学が共存する都市像が描かれているのです。

✅【会話の結論まとめ】

• 大阪の高級ホテル開業ラッシュは、万博だけでなく、その後を見据えた都市戦略の一環。
• 高級ホテルは単なる宿泊施設ではなく、都市のブランド価値や経済格を引き上げる装置。
• 観光産業の発展は、地域経済の活性化や雇用の創出、インフラ整備など、地元にも多くのメリットをもたらす。
• 大阪は「日常の中に非日常がある都市」を目指し、世界の食、文化、多様性が共存する都市像を描いている。

このように万博を契機とした高級ホテルの開業は、大阪の未来像や都市戦略と密接に結びついています。では、なぜ今このタイミングで、これほどまでに多くのラグジュアリーホテルが誕生しているのでしょうか？
その背景を、都市の構造変化や観光トレンドとともに紐解いていきます。

単なる宿泊ではない、“都市の顔”としてのホテル

世界の主要都市を見渡せば、高級ホテルの存在は単なる宿泊機能にとどまりません。たとえばシンガポールの「マリーナベイ・サンズ」やドバイの「ブルジュ・アル・アラブ」は、もはや都市のランドマークであり、都市そのもののブランド価値を高める存在です。

大阪でも同様に、高級ホテルは「都市の玄関口」としての役割を担い始めています。とりわけ再開発が進む梅北2期・うめきたエリアでは、JR大阪駅直結の立地を活かし、フォーシーズンズや大阪ステーションホテル（旧グランヴィア大阪）が開業・再編され、駅から“都市の顔”へと変貌を遂げつつあります。

高級ホテル開業ラッシュの“3つの背景要因”

（1）ポスト万博・IRを見据えた都市戦略

万博は2025年限りのイベントですが、都市づくりは“その先”を見据えて動いています。IR（統合型リゾート）の開業も2030年前後に控えており、大阪府はこれを機に「国際観光都市」としての地位確立を狙っています。

吉村洋文知事は記者会見で次のように述べています：

「夢洲を起点に、大阪を“日本の未来都市”として発展させたい。万博やIRはそのきっかけにすぎない。」

つまり、高級ホテルの開業は、都市の格を引き上げ、世界の富裕層に向けた“招待状”とも言えるのです。

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（2）うめきた再開発と“都市の第一印象”再構築

梅田エリアでは現在、再開発の総仕上げとも言える「うめきた2期」プロジェクトが進行中。公園・MICE施設・ホテル・住宅などが一体的に整備され、“新しい都市の玄関口”を形成しています。

ここにオープンするフォーシーズンズホテル大阪やキャノピーbyヒルトンは、鉄道・空港アクセスに優れた立地を生かし、ビジネス・観光の両方を担うハブとなることが期待されています。

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（3）宿泊体験＝旅の主目的という潮流

世界的な観光トレンドとして、近年注目されているのが“宿泊そのものが体験となる”という価値観です。
• フォーシーズンズではローカルアートや食体験を演出
• Cuveeホテルはワインとデザインで“ととのう”宿泊体験を提供
• ダブルツリーbyヒルトン大阪城は、歴史と水辺の景観を融合させた都市型リゾートに

もはやホテルは「寝る場所」ではなく、「その土地を感じる空間」になっているのです。

高級ホテルは“観光の経済圏”を生む装置でもある

一部では「高級ホテルばかり増やして誰が泊まるのか？」という声もあります。しかし、実はこれらのホテルは地元経済にも波及効果をもたらします。
• 高級ホテルは、地域の飲食店や伝統工芸とのコラボを積極的に行う
• 外国人観光客は、宿泊費以上に「現地体験」や「移動・ガイド・買い物」にお金を落とす
• 宿泊が長期化することで滞在単価が上がる傾向

つまり、高級ホテルは都市全体の「体験の経済圏」を生む装置なのです。